「カツオ条例」で資源維持アピール パネル討論(下) 第3回シンポジウム

第3回シンポジウム 

(高知市 2018.7.24)


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写真右から、
・ファシリテーター=受田浩之(高知カツオ県民会議会長代理/高知大学副学長)
・パネリスト=二平章(茨城大学人文社会科学部市民共創教育研究センター客員研究員)、竹内太一(情報発信分科会副座長/(株)土佐料理 司 代表取締役社長)、福田仁(高知新聞 報道部)


■茨城に「魚食条例」

受田 二平先生は、ひたちなか市で条例をつくって魚食に関する運動を展開されていますよね。その点も非常に参考になると思うので、ぜひご説明、お願いいたします。

二平 茨城県の水産試験場にいたとき、あと3年で退職というころ、どんなことで地元の役に立てるのかなって考えました。那珂湊は、一時はカツオが日本一揚がったところで、魚の町だった。その中で、どんどん衰退する家族漁業を少しでも応援できないかと思って、魚のおいしい町づくりという運動を始めたんです。
 商工会議所の方々に相談をして、お魚を食べる会、「旬魚万来サロン」というのをやり始めた。日立製作所の町なので、いわゆる町方の旦那衆に魚のおいしさを知っていただくということ。会費3000円で、最初は30人ぐらいで始めたんです。20回ぐらいやっているんですが、いまでは100人ぐらい集まっちゃう。作る人はプロの料理人。ボランティアで。材料は、漁協の女性部の方に提供していただく。もちろん原価は払いますけど。そして、旬の魚は、私が紹介して、漁業も紹介するという、そういう会です。それがきっかけとなって、商工会議所が40団体で「魚のおいしいまち推進協議会」というのをつくってくれて、そこが中心となって魚のイベントが始まった。漁協の女性部も来て、漁業者も来て。交流していただく。9年間やりました。d0375307_11555281.jpg

 やはり商工会議所の人はすごいなと思う。議員の提案で魚食条例をつくっちゃおうというアイデアが出て、保守から革新まで全議員の賛同を得て、「ひたちなか魚食普及条例」をつくっていただいた。条例ができるというのはすごい力です。市役所の職員の方の目が変わります。条例が議員提案でできたんだから、そしたら、もちろん市長さんもそれを受けて予算をつくってくれる。それから、市の職員の方々がどんどんそういうことで動いてくれる。
 8月には、去年もやりましたけど、さかなクンを呼んでいろんなイベントをやるとか。本当に魚としては小さな町になっちゃった那珂湊、ひたちなか市ですが、今、動き出しています。日本商工会議所の「観光立〝地域〞特別賞」というのもいただきました。私は年に10回、地魚料理教室をやっています。何が出るか分からない。前の日に揚がった魚を私が買ってきて、メニューはその日の晩に作って、次の日に皆さんに教える。三枚おろし、ヒラメの五枚おろし、イカのおろし方、タコのつくり方とか、そういう基本コースを教えているんです。

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福田
 二平さんには条例の全文を見せてもらいましたが、A4用紙で1枚だけだったのでちょっとびっくりしました。すごくコンパクトだけど理念が詰まっているし、地域のすごい応援歌だなと。これは高知県も参考にさせていただいて、結構、いろいろ盛り上がりが期待できるんではないかと思いました。

受田 この事例をカツオに置き換え、資源の問題や消費行動も含めて盛り込んでいき、高知ならではのものをつくっていくというのは、一つの案ではないかと思いますね。カツオ県民会議の「消費・漁業分科会」でもフードチェーン全体をどう見ていくかという議論をされているので、会場の中田座長さん、いかがですか。漁業・消費の分科会で条令について議論できませんか。

会場(中田勝淑氏) そうですね。これは、われわれにとっても非常に参考になる条例だと思います。ぜひ高知でもやっていきたいと思っています。

二平 条例をつくるときに、少し議論があったんです。ひたちなか市はタコの加工生産、アフリカダコですけど、この生産が日本一のシェアなんです。最初は「タコ条例」にしようっていう案だったんですが、タコに関係ない業者さんもいるからということで、「魚食普及」という一般的な名前にしたんです。でも高知だと、「カツオ条例」でもいいと思うんですね。これだけ日本一カツオを食べる県じゃないですか。だからカツオ条例の方が分かりやすくていいかもしれないですね。

■資源把握は総合的視野で

受田 話題をカツオの「南北回遊」に切り替えます。北緯20度を境に、よく科学的に国際の場で議論するときに、「北緯20度以南と以北は別資源である。別資源というのは、そこが閉じているので、回遊は南北の間でしていないから、熱帯水域の乱獲は日本のカツオの水揚げが激減したこととは関係ない」という風に切り捨てられている。これが今までの現状かと思います。

二平 今の研究者の方々は非常に目線というか、視覚が狭く見るような傾向があるんですよね。もっとダイナミックに魚を捉える必要があるんです。やっぱり全体を見て、資源を捉えないといけない。今までのデータの蓄積もあるわけですから、全体的な蓄積を基に、総合的に資源を見ていくべきです。ただ1、2歳の放流したやつがあんまり北へ上がってこないという、一断面だけを捉える必要はないと思うんですね。最近は、非常に技術が発達してきて、耳石を調査することによって、どこのカツオが北に来たり、南に行ったりしているかというのが分かるようになっている。
 それからもう一つ、分からないのは、本当に標識の打てない小さなカツオがフィリピン、インドネシアの方に寄って、海流とともに乗って、あの島々、瀬がいっぱいあるようなところが生活空間で、幼稚園、小学校になっているわけです。そのカツオたちが本当に黒潮源流域に入ってきて、少し大きくなって、30センチ、40センチになって日本の方に来るかどうかが分からない。標識が付けられないので。そこは耳石を使うとかして、もっと解析を。インドネシア、フィリピンのカツオと日本のカツオとの関係を調べるというアプローチをするかどうかだけだと思います。そういうアプローチをしていないだけの話だと思います。
 それから、もう一つ。やっぱり小さなカツオを取っているインドネシア、フィリピンの漁業の実態は生物学的なことじゃなくて、経済的、社会学的なアプローチができるはずです。調査に行って現地の方々の実態を見る、聞く。そして、それを社会学的なレポートにして、彼らの漁業実態が分かるように示していただく。その中で対策を考えていく。もし、現地の家族漁業が取れなくなったら困るというならば、そこはいろんな援助の仕方もあるはずです。

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受田
 社会学的な見地からの現状の把握というのは、おそらく現場に行かないと分からないということと、かなりの信頼関係が必要です。ここは県民会議として、特効薬と言えるものがすぐに見つかりません。ロビー活動や現地視察を相当幅広にやっていかないといけないのかなと、ちょっと気が遠くなっておりますけれども、やっぱり地道にやるべきということですね。

二平 はい。皆さんの活動が本当に高知だけじゃなく、もしかしたら日本を変えるし、世界を変えるかも分からない。本当に地道だけれども、一つずつやっていただく。例えば、カツオ漁業を持続的な産業として後世に残すために何をやっていったらいいかというのを、高知県内外、国内外の人が集まって意見交換する場があれば、本当に素晴らしい県民会議になるだろうと期待しています。
他力本願から自力展開へ

受田 パネリストは最後に短く覚悟を。

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竹内
 やっぱり高知県民がカツオを守らんかったらカツオは滅びますね、という気持ちです。今、本当に大変なんです。WCPFCで相手国を論破するなんて、なかなか難しい。けど、思考を停止したらカツオを守る人がおらんなるといいますかね、日本のカツオを守る県はないと思いますね。そういう意識で集まっていただいている人がいっぱいいるから、まだまだ希望は持てるし、やり方はあると思います。

福田 最先端のムーブメントを高知から。非常に高知らしいなと思いました。竹内さんたちが一石を投じられてから1年半ほどが経過しましたが、今日また、階段を一つ上がったのかなと実感しました。

受田 ありがとうございます。このあたりで結ばせていただきたいと思います。
 「高知カツオ県民会議、いつまでやるんだ?」という話が、去年立ち上がったとき議論されました。今年10月末にある「全国豊かな海づくり大会」が活動の区切りじゃないかというような話もあったんですけど、何となく終わりはそこではなさそうだなという感じがしております。
 ますますやることもたくさんあり、課題も山積しておりますけれども、とにかくWCPFCの協議を見つめていく他力本願の世界から、消費行動という自らの足元で自力でなんとかできるような世界が少し見えてきました。ぜひ皆様と共有していきたいという思いです。

(終わり・情報発信分科会)



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by katsuonews | 2018-09-15 10:00 | カツオ | Comments(0)

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