カツオ再生へ「和歌山アピール」
2018年 03月 27日
●カツオ地域の未来づくりをめざす和歌山アピール●
黒潮の恵みであるカツオ資源の再生めざし、資源にやさしいカツオ漁と伝統の食文化を守り、輝く地域漁村の未来をつくろう!
紀州・和歌山は日本におけるカツオ漁とカツオ節の発祥の地です。
江戸時代以前から、紀州の先人たちは、西は五島列島、北は陸奥湾にまで旅漁をしてカツオを追うと共に、その卓抜とした漁労技術を惜しむことなく全国に伝えてきました。
紀州の「海の民」が伝えたカツオ漁労技術は、その後、太平洋沿岸各地に広がり、各地ではカツオ漁・カツオ節製造が盛んとなり、今ではカツオは太平洋岸の地域漁業や地域経済を支える重要な魚となっています。
カツオは多くの魚の中でも特別な魚で、奈良時代以前から神様の食事には欠かせない魚でした。そこには、疲れを知らない筋肉をもち、休むことなく泳ぎ続ける魚として、健康をつかさどる食材、薬効のある食材としての価値があったのだろうと思われます。
日本人ほどカツオが大好きな国民はおりません。
今、世界が認める和食文化を支えたのもカツオのダシの文化です。毎年、春になると黒潮と共に太平洋岸に群れをなして来遊するカツオは、各地に神事や豊かなカツオの食文化を生みだし、地域の経済を潤してきました。
カツオは、まさに、太平洋岸の地域漁村のいのちと暮らしを支えてきた魚と言えるでしょう。
しかし、20年ほど前から、日本近海へ北上するカツオの群れが減りはじめ、年々、その傾向は深刻になっています。今や、太平洋岸の地域漁村を支えてきた近海カツオ一本つり漁業やカツオひき縄漁業が存亡の危機を迎えています。
地域に根ざしたカツオつり漁業が衰退し、家族漁業が減少していくことは、地域漁村自治体が衰退していくことです。
カツオ資源の減少を訴えているのは、日本の釣り漁業者ばかりではありません。熱帯域の島々の小規模・家族漁業者、日本と反対側の南側の回遊域にあたるニュージーランド海域の人々も懸念を表明しています。
この20年間でカツオ資源に起きたことは、産卵海域である熱帯域における大規模まき網漁業の漁獲です。その漁獲で中西部太平洋のカツオ漁獲量は、この20数年で100万トンから200万トンに急増しました。
この漁獲量増大が、日本近海へのカツオの北上来遊の悪化をもたらしています。このような熱帯域での過剰漁獲が続くならば、熱帯域のまき網漁業や、熱帯域の冷凍カツオを原料とする鰹節産業にも、悪い影響が及んでくると思います。
国や県、地方自治体はもちろん、漁村地域住民、カツオ好きな一般消費者、鰹節産業の皆さんに、ぜひカツオ資源、カツオ漁業のきびしい現状についてご理解をいただきたいと思います。そして、カツオ漁業関係者と共に、カツオ資源再生のための行動に、一緒に立ち上がっていただければ、こんなにうれしいことはありません。
私たちは、カツオ資源を再生させ、伝統のカツオつり漁業を持続させ、地域のカツオ食文化を守り、元気な地域未来づくりをめざして取り組んでいます。各地の「カツオまつり」が、地域の皆さんの応援を得て、次の世代に継承され、ますます盛大に開催され続けることを願っています。
私たちカツオ関係自治体・住民は、カツオ産地間の連携を一層強めながら、先人たちの努力で地域に花開いてきたカツオつり漁業とカツオ産業、そしてカツオ食文化を守り続けるために活動していくことを誓います。
黒潮の恵みであるカツオ資源の再生めざし、資源にやさしいカツオ漁と伝統の食文化を守り、輝く地域漁村の未来を共につくりましょう。
最後に、この訴えが、日本国内ばかりでなく、海を越え中西部太平洋諸国政府の皆さん、海外の漁業関係者の皆さんに届くことを願って和歌山アピールといたします。
2018年3月24日 「カツオまつりサミット in すさみ」参加者一同